返品商品の平均原価¶
平均原価法 (AVCO)とは、棚卸資産の評価方法の一つで、ある期間に購入または生産された商品の総原価を手持ち商品の総数で割って原価を評価する方法です。棚卸資産の評価は、以下の目的で使用されます:
- 企業の資産価値を反映する 
- 売れ残った商品の量を把握する 
- まだ利益を生んでいない商品に金銭的価値を計上する 
- 四半期を通しての商品の流れを報告する 
AVCO (平均原価法) は加重平均で原価を評価するため、数種類のプロダクトを大量に販売する企業に適しています。Odooでは、この原価分析は商品が入荷されるたびに 自動的に更新 されます。
このように、出荷がサプライヤーに戻されると、Odooは自動的に在庫評価の変更を反映した会計仕訳を作成します。しかし、Odooは AVCO (平均原価法) の計算を自動的に更新 しません。 なぜなら 在庫評価 と矛盾が生じる可能性があるからです。
注釈
このドキュメントでは、理論上の特定のユースケースを取り上げています。AVCO の設定および使用方法については、在庫評価設定 を参照して下さい。
設定¶
プロダクトで平均原価在庫評価を使用するには、  に移動し、AVCO (平均原価法) を使用するカテゴリを選択します。プロダクトカテゴリページで 原価法 を 平均原価法 (AVCO) に、 在庫評価 を 自動化済 に設定します。
参考
平均原価法を使用¶
平均原価法は、プロダクトが倉庫に入荷した際に在庫評価を調整します。このセクションではその仕組みを説明しますが、説明が不要な場合は サプライヤ使用例に戻る セクションに飛んで下さい。
計算式¶
新しいプロダクトが入荷すると、各商品の新しい平均コストが計算式を使って再計算されます:
- 旧数量:新規入荷前のプロダクト在庫数 
- 旧平均原価: 前回の在庫評価で算出された単一プロダクトの平均原価 
- 入荷数:新規配送で入荷するプロダクト数量 
- 購買価格: プロダクト入荷時の見積価格(仕入先請求書が後から届く場合があるため)。この金額には、プロダクトの価格だけでなく、送料、税、仕入諸掛 などの追加費用も含まれます。仕入先請求書の受取時に、この価格が調整されます。 
- 最終数量: 在庫移動後の手持ち在庫の数量 
重要
プロダクトが倉庫から出るとき、平均原価は変わり ません。平均原価の評価が調整され ない 理由については こちら をご覧下さい。
平均原価を計算¶
出荷のたびにプロダクトの平均原価がどのように変化するかを理解するために、次の倉庫作業と在庫移動の表を見てみましょう。それぞれ、平均原価評価がどのように影響されるかを示す異なる例です。
| 工程 | 入荷額 | 在庫金額 | 手持在庫数 | 平均原価 | 
|---|---|---|---|---|
| $0 | 0 | $0 | ||
| テーブル8台を1台につき10ドルで入荷 | 8 * $10 | $80 | 8 | $10 | 
| 4テーブルを$16/台で入荷 | 4 * $16 | $144 | 12 | $12 | 
| 10テーブルを配送 | -10 * $12 | $24 | 2 | $12 | 
Exercise
上記の計算を理解するために、"1台$10で8台のテーブルを入荷" 例を確認して下さい。
元は、プロダクト在庫は0なので、全ての値は$0です。
最初の倉庫作業では、8 個のテーブルがそれぞれ $10 で入荷されます。平均原価は 式 を使って計算されます:
- テーブルの 入荷数量 は - 8で、それぞれの 購買価格 は- $10です。
- 分子の在庫金額は - $80と評価されます。
- $80を、保管するテーブルの合計量である- 8で割ります。
- $10が初回出荷分のテーブル1台の平均原価です。
これをOdooで確認するために、購買 アプリで、過去に在庫移動のない新規プロダクト、テーブル`を8 個、それぞれ $10 でオーダします。
プロダクトフォームの 一般情報 タブにあるテーブルの プロダクトカテゴリ フィールドで ➡️ (矢印) アイコンをクリックし、プロダクトカテゴリを編集する 外部リンク を開きます。原価計算法 を 平均原価法 (AVCO) に、 在庫評価 を 自動化済 に設定します。
その後、オーダに戻ります。オーダ確定 をクリックし、プロダクト入荷 をクリックして入荷を確定します。
次に、  に移動して、プロダクト入荷で生成された在庫評価記録を確認します。テーブル のドロップダウンを選択し、評価レイヤ の 合計値 列を表示します (特定の時点での在庫評価 = 手持ち数量 * 単価) 。  在庫のある8つのテーブルは$80の価値があります。
 
ちなみに
プロダクトカテゴリの 原価計算法 が 平均原価法(AVCO) に設定されている場合、プロダクトの平均原価はプロダクトページの 一般情報 タブにある 原価 フィールドにも表示されます。
プロダクト配送(使用例)¶
出荷配送の場合、出荷プロダクトは平均原価評価 に影響しません。平均原価評価は再計算されませんが、在庫からプロダクトが取り除かれ、顧客ロケーションに配送されるため、在庫値は依然として減少します。
Exercise
平均原価評価が再計算されないことを説明するために、"テーブル10台の配送"の例を検証します。
- 10台のテーブルが顧客に発送されるため、入荷数 は - -10となります。仕入先の 購買価格 の代わりに以前の平均原価 (- $12) が使われます。
- 入荷在庫金額 は - -10 * $12 = -$120です。
- 旧 在庫金額 ( - $144)は 入荷在庫金額 (- -$120) に加えられるので、- $144 + -$120 = $24となります。
- Only - 2tables remain after shipping out- 10tables from- 12. So the current inventory value (- $24) is divided by the on-hand quantity (- 2);
- $24 / 2 = $12, これは前のオペレーションと同じ平均コストです。
Odooでこれを確認するには、販売 アプリで 10 テーブルを販売し、配送を検証した後、 で在庫評価記録を確認します。最上位の評価レイヤーで、10 テーブルを出荷すると、プロダクト価値が -$120 下がります。
注:この在庫評価記録には、この販売による収益が記載されていないため、この減少は会社の損失ではありません。
 
サプライヤーに商品を返品する(使用例)¶
AVCO (平均原価)法でプロダクトが評価される価格とサプライヤーに支払われる価格が異なる場合があるため、Odooは返品された商品を特殊な方法で処理します。
- プロダクトは購入時の価格でサプライヤーに返却されますが、 
- 内部原価評価に変更はありません。 
上記 例テーブル は以下のように更新されています:
| 工程 | 数量*平均原価 | 在庫金額 | 手持在庫数 | 平均原価 | 
|---|---|---|---|---|
| $24 | 2 | $12 | ||
| $10で購入したテーブル1台を返品 | -1 * $12 | $12 | 1 | $12 | 
言い換えると、取引先への返品は倉庫から出荷されるプロダクトの一形態としてOdooに認識されます。Odooにとって、テーブルは1台あたり$12で評価されるため、プロダクトが返品されると在庫金額は$12減少します。最初の購入価格である$10は、テーブルの平均原価とは無関係です。
Example
$10`で購入したテーブルを1台返品するには、*在庫* アプリで、 :guilabel:`在庫概要 から、 入荷 をクリックし、目的の入荷を選択して、 練習1 で購入した8台のテーブルの入荷に移動します。
次に、有効な配送オーダの 返品 をクリックし、リバース転送ウィンドウで数量を 1 に修正します。これでテーブルの出荷が作成されます。guilabel:検証 を選択して出荷を確定します。
に戻り、出荷によって在庫が$12減少したことを確認します。
 
出荷プロダクトの在庫評価ミスの排除¶
平均原価評価を出荷時に再計算すると、会社の在庫に矛盾が生じる可能性があります。
このエラーを説明するため、下の表は、テーブル1台が顧客に出荷され、もう1台のテーブルが仕入価格でサプライヤーに返品されるシナリオを示しています。
| 工程 | 数量*価格 | 在庫金額 | 手持在庫数 | 平均原価 | 
|---|---|---|---|---|
| $24 | 2 | $12 | ||
| 1プロダクトを顧客に配送 | -1 * $12 | $12 | 1 | $12 | 
| $10で購入したプロダクト1点を返品 | -1 * $10 | $2 | 0 | $12 | 
上記の最終操作では、テーブルの在庫が残り 0 であるにもかかわらず、テーブルの最終的な在庫評価は $2 です。
修正方法
返品の評価には平均原価を使用します。$10で返品された商品は、社内では1$12で評価されます。在庫金額の変動は、$12 の価値があるプロダクトが会社の資産に計上されなくなったことを意味します。
アングロサクソン会計¶
英米式会計 を使用する会社では、 AVCO を使用することに加えて、仕入先に支払うべき金額を追跡する保有勘定もあります。仕入先がオーダを納品すると、在庫に入ったプロダクトの仕入先価格に基づいて 在庫金額 が増加します。保有勘定 (在庫入力 と呼ばれます) は貸方記入され、仕入先の請求書が届いて初めて消込されます。
以下の表は、仕訳と勘定を反映したものです。在庫入力 勘定は、仕入先からの請求書をまだ受け取っていない場合に、仕入先に支払うための資金が入力されます。プロダクトの 評価額 と購入価格との間に価格差があるプロダクトを返品する際に、勘定科目のバランスをとるために、価格差異 勘定が作成されます。
| 工程 | 在庫入力 | 価格差異 | 在庫金額 | 手持在庫数 | 平均原価 | 
|---|---|---|---|---|---|
| $0 | 0 | $0 | |||
| テーブル8台を$10で入荷 | ($80) | $80 | 8 | $10 | |
| 入荷仕入先請求書 $80 | $0 | $80 | 8 | $10 | |
| テーブル4台を$16で入荷 | ($64) | $144 | 12 | $12 | |
| 仕入先請求書$64を受取る | $0 | $144 | 12 | $12 | |
| テーブル10台を顧客に配送 | $0 | $24 | 2 | $12 | |
| 元は$10で購入したテーブル1台を返品 | $10 | $2 | $12 | 1 | $12 | 
| 取引先から返金 $10受取る | $0 | $2 | $12 | 1 | $12 | 
プロダクト入荷¶
概要¶
プロダクト入荷時に、Odooでは、会社が購買した商品の代金を支払うことができるように入荷した商品の価格に一致する金額を 負債勘定 である 在庫入力 に先に移動させます。その後、請求書を受取ると、保有勘定の金額が 買掛金 に振替されます。この勘定への振替は仕入先請求書が支払が完了したことを意味します。在庫入力 は、仕入先請求書を受領した時点で消込されます。
在庫評価とは、各在庫製品が内部的にいくらの価値があるかを計算する方法です。プロダクトが 評価された価格 と、プロダクトが実際に 購買された価格 との間には差があるため、在庫評価 勘定は、在庫入力 勘定の貸方操作および借方操作とは無関係です。
これらをより明確に理解するには、以下の内訳をご覧下さい。
入荷プロダクトで均衡している勘定¶
この例では、ある会社で、あるプロダクト テーブル の在庫が0個からスタートしたとします。その後、取引先から8台テーブルが届きます:
- 在庫入力 勘定には、仕入先に支払うべき貸方 - $80があります。この勘定科目の金額は在庫金額とは無関係です。
- $80相当のテーブルが 入荷 (棚卸資産 勘定から- $80貸方記入)、そして
- 入荷した商品に対して - $80を 払出 する必要があります。(在庫入力 勘定- $80を 貸方記入)。
Odooでは¶
AVCO 法を使用する配送を受取ると、Odooは会計仕訳を作成します。プロダクトページの プロダクトカテゴリ フィールドの横にある ➡️ (矢印) アイコンを選択して 価格差異勘定科目 を設定します。
勘定属性 の下に、勘定名を入力し、 作成と編集 をクリックして、新しい 価格差異勘定 を作成します。次に、勘定科目の タイプ を 経費 に設定し、 保存 をクリックします。
 
次に、購買 アプリまたは 在庫 アプリで貨物を受取り、 に移動します。リストで、該当するプロダクトの入庫作業に一致する 参照 を見つけます。
 
テーブル8台の明細をクリックして下さい。この会計仕訳は、8台が入荷した時に 在庫評価 勘定が $80 増加したことを示しています。逆に、在庫入力 勘定(デフォルトでは 預かり在庫(入荷済) 勘定として設定されている)には $80 が借方記入されています。
 
仕入先請求書を受領した時点で勘定が均衡している¶
この例では、ある会社が、あるプロダクト(テーブル)の在庫が0個からスタートしたとします。その後、仕入先から8台のテーブルが入荷します。仕入先から8台分の請求書が届いた時:
- 仕入先請求書の支払に 在庫入力 勘定科目の - $80を使用します。これは相殺され、勘定科目には現在- $0があります。
- 借方 在庫入力 - $80(この勘定科目を消込する)
- 買掛金 - $80を借方記入します。この勘定科目には、会社が他へ支払うべき金額が保存されており、経理担当者はこの金額を使って仕入先に小切手を発行します。
Odooでは¶
仕入先から支払要求があったら、 に移動し、8台のテーブルの PO を選択します。その PO の中で 請求書作成 を選択します。
仕訳項目 タブに切り替えて、$80 が保有勘定科目である 預かり在庫 (入荷済) から 買掛勘定 にどのように転記されたかを見ます。請求書を 確認 して、取引先への支払を記録します。
 
プロダクト配達時¶
上記の例のテーブル では、10個のプロダクトが顧客に納品されると、新しいプロダクトが入ってこないため、 在庫入力 勘定はそのままになります。簡潔に言うと:
- 在庫評価 には - $120が貸方記入されます。在庫評価から差引いて- $120相当のプロダクトが会社から出ることになります。
- 売掛金 を借方計上し、販売による収益を計上します。 
 
プロダクト返品時¶
上記のテーブルの例 では、 $10 で購入したプロダクトを1つ返品する場合、ある会社は仕入先から 買掛金 勘定に $10 が入ることを期待します。しかし、返品時の平均原価は $12 であるため、在庫入力 勘定からは $12 が引き落とされなければなりません。不足分の $2 は、商品の プロダクトカテゴリ に設定されている 価格差異勘定 に計上されます。
注釈
価格差勘定 の動作はローカリゼーションによって異なります。この場合、勘定科目は仕入先価格と 自動 在庫評価方法の差額を保存するためのものです。
要約:
- 在庫から在庫入力にテーブルを移動させるために、在庫入力 勘定 - $10を借方記入します。この移動は、テーブルが出荷処理されることを示すものです。
- 在庫入力 に 価格差異 用の勘定科目に追加の - $2を借方記入します。
- 在庫がなくなるので、在庫評価 - $12を貸方記入します。
 
仕入先の返金を受取ったら、
- テーブルの価格を消込するために、在庫入力 勘定 - $10を貸方記入します。
- 借方入力 買掛金 - $10で、経理担当者が支払を回収し、仕訳帳に支払を登録します。
